サッカーW杯と日本人


サッカー第20回ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の決勝戦が
7月13日(日本時間14日)に行われ
ドイツがアルゼンチンを延長の末に1-0で破り
ドイツの優勝にて今大会の幕を閉じた。

ドイツは当時西ドイツとして出場した1954、74、90年を含め
24年ぶり4度目の世界王者となった。
つまりそれは、東西統一後初のドイツ代表チームによるW杯制覇であり
南北アメリカ大陸で開催された大会において、初めて南米勢を抑え
欧州勢がW杯を制するという新たな歴史を創ったのである。

今回の大会は、歓喜と悲哀にあふれ、名勝負、番狂わせが大会を盛り上げた。
大会では、前回優勝のスペインが1次リーグで敗退し
期待のアジア勢も早々に姿を消していき
地元ブラジルが準決勝でドイツに歴史的大敗を喫するという衝撃があった。

あらためて、全世界的スポーツとしてのサッカーの国際性を
思い知らされた。
子供も年寄りも、男性も女性も、大統領も学生たちも
皆、歓喜し、そして涙したのである。
感動を与えるスポーツの素晴らしさは、
オリンピックでも味わえるが、
W杯では、さらに高い興奮を観る者にもたらしてくれる。
そのエネルギーは、時として社会に暴動をもたらすこともあり
サッカーが持っている、人々に与える計り知れない
エネルギーの大きさに驚く。

そんな、サッカーW杯を観ていて、強く感じたことがある。
私たちは、常に何かに熱中できるものを持ちたいと願うものだ。
スポーツも良いだろうし、映画や演劇、音楽でも良いだろう。
もちろん仕事でも良い。

興味を持つこと、熱中すること、諦めずに続けること
失敗を他人のせいにしない、常に明るさを失わない
様々な成功の哲学は、実は身近なところにあるのかも知れない。

今回、24年ぶりの優勝をつかんだ統一ドイツの代表チームは確かに素晴らしい。
でも、敗れた多くのチームは、今回の試合の中で、さらに多くを学んだことだろう。

日本代表チームは、残念ながら1次リーグで1勝も挙げられずに敗退した。
悔しさはバネとなり、選手たちのさらに大きな飛躍を期待するものだ。

その一方で、今回、日本のサポーターが試合終了後のスタジアムで、
ごみを拾う姿が世界に配信され、称賛を浴びたことを素直に喜びたい。
地元ブラジルメディアは
「コートジボワールに負けたにも関わらず、試合後に日本の教育と礼儀を見せた」と称賛し、
さらに、サッカーの本場であるイギリスのメディアでは
「フットボールファンは、大事な試合に負けるとゴミを投げ、スタジアムを汚すことが多い。
しかし日本のサポーターは善意の精神を忘れなかった」と報じてくれた。

日本の善意のサポーターは、選手と一体となって応援し、そして世界と戦ってくれた。
この日本のサポーターの勝利に、単なる嬉しさだけではなく、
世界人々がしっかりと見ていてくれていたことに感謝するとともに
善行にも悪行にも、社会の目は向けられており
海外に出る機会のある日本人として自然と身の引き締まる思いがした。

海外においてなお、自らの身を律する民族である日本人の行動は、
日本人にとって、実は自然な振る舞いでもある。
その価値観や高い倫理観は昔から変わらないことを、是非、
海外の人にも、そして日本人自身にも知ってもらいたいと思う。

今回のW杯において、日本人は決して負けていなかったことを。