施行70周年の日本国憲法


先日、日本国憲法改正を推進する超党派の議員連盟、
「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘)の大会に出席、
さらに数日後には、民間憲法臨調である、「美しい日本の
憲法をつくる国民の会」(代表・櫻井よしこ)の第19回
公開憲法フォーラムに出席してきました。


この二つの会合に、共通した出来事は安倍総理本人の憲法改正に
関するメッセージが直接発表されたことではないだろうか。
議員同盟の会合に現職の総理大臣が出席したのは、史上初めての
ことであり、民間憲法臨調でビデオメッセージの形でも明確に
現職総理大臣が憲法改正について、直接意見を表明することは
極めて異例なことであろう。

安倍総理が抱く憲法改正への強い決意は、長年の政治的悲願でも
あることは広く知られるところである。
しかし、明確な国家論から裏打ちされた憲法観なり、政治哲学を
披露することはこれまでも無かっただけに、
唐突に、憲法記念日において日本国憲法改正への具体的な考えが
示されたことは驚きでしかない。


安倍総理が言う「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」、
「第9条の1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」、
「(教育無償化に関し)高等教育についてもすべての国民に開かれた
ものとしなければならない」などの具体的な発言は、行政府の長で
ある内閣総理大臣の発言としては不適切であると思う。

憲法及び改正に関する問題は、
憲法第41条「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の
立法機関である」とあるように、立法府(国会)の専管事項であり、
憲法改正については、第96条「この憲法の改正は、各議院の総議員の
三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案して
その承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は
国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を
必要とする」とあるように、立法府と国民との間の作業なのである。

とはいえ、これまでの憲法改正に関する国会の議論は、遅々として
進まず、議論の深まりすらも感じられなかった。事実、国会内に
設置された憲法審査会は頻繁に開催されているとは言えず、むしろ
参議院では開催すらされていないというのが現状である。
そんな国会の現状に苛立ちを隠すことなく、総理大臣自ら改正に
関する具体的な日程や項目を明言したことは、憲法改正の議論を
いっきに加速させようとの安倍総理の強い決意が国民や国会議員に
示されたということが出来る。
しかしながら、このことが逆に冷静な議論を必要とする改正問題を、
困難にさせてしまったのではないのか、と危惧するものである。